進水式の街 3 新しい祭が生まれる

4月に続いて8月にも、進水式を見るために佐伯市を訪ねてみた。

今回の会場は本田重工業。
前回見せてもらった三浦造船所とは小さな入り江を挟んだ対岸になる。

前回は日中だったけれど今回は夕方5時からスタート。
開始予定の15分くらい前に到着。

造船所脇の駐車場にはたくさんの車が並んでいる。
さらに次々とやってくる車をハッピ姿の職員さんが誘導している。
車から降りてくるのはほとんどは家族連れ。
楽しそうにしゃべりながら歩いている後ろ姿からはウキウキした雰囲気が伝わってくる。

造船所に入る前からウキウキした雰囲気

門をくぐっると会場の奥に今日、進水する船が見えてくる。
遠目で見ても大きい。
資料で見ると
前回の船の大きさは750トン(総トン・容積)
今回の船は13,000トン(排水トン・重量)

船の大きさを表す「トン」という単位、実はとてもややこしい。
容積を表す時もあれば重さを表す時もある。
本当は違う単位なのだけどどちらも呼び方が「トン」なので分からなくなる。
前回の資料にはは容積、今回は重さが書いてあるので、数字で単純に比べられないのだけど、今回の船は前回よりもずっと大きい。

遠くに今日の主役。デカイ!

入り口から少し斜面を上ったあたりがちょっとした広場になっていてそこが一般の見学スペース。
上がってみると本当にすぐ近くに船がいる。
目の前にそびえ立っているのでかなりの存在感。

そして狭い場所に固まっているめいか、集まっている人も前回よりも心持ち多く見える。
子供とお母さん。友達同士で来ている若い人たち。もうリタイアしたっぽいおじさん同士があいさつしあう。
カメラを抱えた人も多い。
「初めて進水式見に来たんだよ」と知り合いに話しかけている人。
「今日は、人が多いねえ」と話している常連さんらしい人たち。

船が近い。そしてたくさんの人が!

夏の日の夕暮れ。
薄曇りだけど蒸し暑く、動かなくても汗がにじんでくる。
見学の人たちは入り口でもらったパンフレットや持参のウチワで風を送りながら進水式の始まりを待つ。

なんだろう、この雰囲気は。
どこか覚えのあるこの風景は。
額の汗をぬぐいながらそう考えてみた。

夏祭り。
それも近所の小さな神社。

有名でもなんでもないけれど、近所の人がそぞろ歩いたり、自転車に乗ったりして集まってくる、こぢんまりとしたお祭り。
作りかけの船や高いクレーンに囲まれた造船所の中だけど、屋台なんで出ていないし祭り提灯もぶら下がってないけれど、そこに立ち現れているのは間違いなく祭りの日のざわめきだった。

来賓の席も今回は目の前。
施主の関係者がやってくる。
神主さんの祝詞もすぐ目の前で行われる。
命名式。支鋼切断。
そしてシャンパンが船首に叩きつけられる。
その一連が今日は目の前で執り行われている。

来賓席のようすもすぐ近くに見える

進水式が終わり、見学者は笑いさざめきながら帰っていく。
みな満足そうな表情を浮かべている。

造船を生業とする街で新しい船が生まれる。
それは暮らす人に共有されるべき祝い事なのかもしれない。
これまでは関係者の中でだけが参加できたセレモニーを開くことでひとつの祭が生まれたのかもしれない。
蒸し暑い夏の日、進水式を見るために集まった人たちをみてぼくは思った。
日本のどの街にもない、この街だけの新しい祭を。

 

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